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古紙リサイクルーその大いなる可能性

 原油価格が高騰を続けている。2008年も新春早々に、ニューヨーク原油先物取引市場に於いて、所謂「百ドルの男」、リチャード・アレンズ氏がどうやら記録を塗り替えて見たいだけの目的で買っただけであるらしい値からとは言え、一時、1バレル100ドル価格が誕生した事からも、その凄さが窺える。
 この価格高騰がもたらす経済動向や一般市民生活への影響もさることながら、その埋蔵量の有限性や、何にも増してエネルギー源としての使用による大量のCO2排出が原因と思われる地球温暖化現象を防止する観点からも、安全且つ循環持続可能な石油代替資源の開発が人類共通の重要課題として急速に浮上して来ているのは周知の通りである。

 この様な状況下、安全且つ循環型石油代替エネルギー資源として近年、切り札的に脚光を浴びる様になって来たのがバイオエタノールである。 このバイオ燃料を稲わらから製造する方法を、我が国、農林水産省が開発し、実用化に向け動きだしたという(日本経済新聞2008年1月7日付夕刊)。 なるほど記事にもあるようにこの方法だと、環境に配慮出来るうえ、現在バイオ燃料の主原料となっている、とうもろこし等の食糧飼料類が、従来に於ける本来の使用分野に需給アンバランスを生じているといったリスクも回避でき、穀倉地帯を持続可能な「油田」とする事が可能となる。
 
 軽い衝撃をうけた。 「遂に稲わらまで来た!次は古紙や!これは、板紙の原料経緯ともよく似てる!」 そう感じた。
 今を去る2000年6月22日午後2時30分、株式会社アライの森当時社長だった新井清之は、財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)に真継由佳氏を訪ねていた。そこで彼は、少なからず感動に値する事実を知り、おりにつけその時の話しをしてきている事に思い至ったからである。 真継氏の説明とその時受け取った機関誌「RITE NOU」の内容から新井が知ったのは、古紙がエタノールの原料となる[貴重なバイオマス資源]であると断定されている事実であった。
 以下にその概要を記してみる。
 財団法人 地球環境産業技術研究機構が発行している機関誌 「RITE NOU 33~35] 特集 「CO2 リサイクル」及び「環境バイオー新時代の幕開け」の中には、湯川 英明 RITE微生物分子機能研究室 主席研究員(当時)の、「セルロース系資源からの燃料油製造」と「微生物バイオの最前線」と言う表題を冠した二つのREPORTが紹介されている。
 それによると、先ず、澱粉由来からだけでなく、植物の構成成分であるセルロース類を低分子化する事からも、糖類を得る事が出来る。とあり、セルロース類の供給源には、木材の廃材や都市ごみに含まれるセルロース系成分に加え、回収古紙が挙げられる事に着目がなされているのである。 そしてさらに、湯川さん達は、こうして得られた糖類をエネルギー源としCO2を処理固定する新規な微生物反応を発見した。 即ち、何と、CO2を“餌”として取り込んだ微生物が糖質を部分的に分解して取り出したエネルギーを用いてCO2を高分子原料をはじめ、燃料原料となる脂肪酸等に変換してしまう反応である。とされている。
 次に、湯川さんは「太陽エネルギーに基づき光合成で生成されるバイオマスのエネルギー換算値は、人間が使用している総エネルギーよりも一桁多く・・・」と記した上で、1999年8月12日のクリントン米国大統領による「バイオマス資源の利用に関する研究を大規模に実施する」という、この時期としては衝撃的とも言える演説の内容にも触れている。
そして、バイオマス資源としての二つの事例、即ち一つは、米国に於いて都市ごみをバイオプロセス源料とした自動車用燃料エタノールの生産が2001年末までに実現する予定である事。もう一つは、日本に於いてバイオマス資源活用の一つとして「古紙」の利用にRITEが注目している。という事を紹介し、「回収古紙は、バイオマス由来の資源として大変“優等生”なのである。」と断定したうえで、古紙をバイオマス資源とするエタノール生成のプロセスが、詳しく記されている。
 
 7年あまりの歳月を経て、前述の「稲わら・・・」の新聞記事を見、つながった記憶が、次は「古紙・・・」へと閃き、軽い衝撃を受けたわけである。 昨年来、米国では石油代替燃料としてバイオエタノールの生産が大々的に行われ始めたが、その原料資源に、とうもろこし等の穀物が使用されている為、とうもろこしをはじめとする穀物価格が俄かに高騰して来ており、食糧、飼料分野に深刻な影響が出始めている。さらに森林を伐採して、穀物畑に変えると言う環境破壊的な現象さえも起って来ている。 これでは本末転倒の事態と言わざるをえない。 湯川さんは1999年当時すでに前記RITE NOWでのREPORTに於いて「・・・糖分を澱粉由来で得ようとする事は、食糧飼料向けと拮抗し意味はない。・・・」と断言されている。氏の慧眼には、驚くばかりである。
 勿論古紙をバイオ燃料の原料資源として使用した場合、製紙原料向けと拮抗する事にはなる。 しかしながら、バランスの取れた循環可能な木材資源を使用してのパルプ、余剰古紙、都市ごみからの繊維資源、稲わら等の農産廃棄物等々、循環型資源を総動員しての取り組みに真摯な努力を尽くせば、製紙原料とバイオエタノール資源との拮抗は良好なバランスを保って共存出来るものと思われる。 バランスを計る為の「行司役」には、余程の破滅的事態を招来せぬ限り、自由主義経済に基づく市場原理に任せれば良い。 もし仮に需給面等に問題が生じたとしても、それらは単に人間社会での利便性追及分野に於ける問題であり、食糧飼料分野に於いての問題とは異なり、ヒューマニズムに反する問題とはならない。
 
 この様に考えを巡らせて来ると、まさに古紙は大いなる可能性を包容している。
 「古紙の山は宝の山」 2008年も1月半ばを過ぎた日の昼下がり、炬燵に足を伸ばし、読み古した雑誌古紙を枕にうたた寝の遅めの初夢を正夢にと願うひと時である。

by morinonusi | 2008-01-17 18:13 | Comments(0)  

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