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米をガソリンに変えてしまわないで下さい

 地球温暖化抑制の観点から、バイオエタノールについての研究、開発そして実用化への取り組みが進められています。温室効果を持つCO2削減のためには循環型社会を構築する事が重要であり、バイオエタノールの実用化はそれに大きく貢献出来るからです。
現在、バイオエタノールの原料はセルロース系資源から得られているようです。従って稲わら等の農産廃棄物、都市ごみに含まれる繊維資源、えっ!と驚かされますが、新聞古紙等々が循環可能なエタノールの原料となるようです。そこで思うのですが、車を走らせていて目につく道路の両側や河川敷、堤防等に生い茂る背の高い雑草類や雑木、山間部に入れば森の下草類なども、エタノールの大切な原料となるのではないでしょうか。今のところ、これらは邪魔者扱いにされ、高いコストをかけて行政当局や、土地所有者が刈り取り、切り取って焼却処分にしてしまっているようです。他にもじっくり探せば色々有効な循環型エタノール原料は在るように思われます。
 このように、環境保全を目的とした循環型社会構築に必要な、バイオ燃料を含む、各種製品の原料調達は、リサイクルを基本にしなければうまくいかないと思われます。
 バイオエタノールの使用が重要だからと言って、安易に大豆やトウモロコシなど、従来、食料、飼料とされてきた大切な農作物をその原料にしてしまってはなりません。米国をはじめ世界各国でこの事が行われたため、今、食の分野に大きな異変が起こってきております。身近なところでは各種食品の値上がり、世界を見渡せば、貧しい国々の人達に忍び寄る食糧危機などがそれであり、これらは深刻な問題といえましょう。
 おりしも、平成20年2月21日付日経新聞夕刊の“おコメ変身”という見出しのコーナーに、我が国で、米を原料としてバイオエタノールを造り、それをガソリンにしてしまおうという研究がなされ、実用化が間近に迫っている、という内容の記事が掲載されておりました。
 この記事を目にすると同時に、驚きというかあきれるというか、憤りさえ覚えるような感情がこみ上げて参りました。
 何という事でしょう、米を、日本人にとって主食の大切な米を車を走らせるためのガソリンにしてしまおう、というのです。
 子供のころ、家族で輪になっての食事時よく親から、茶碗に残った、たとえ一粒のご飯粒であっても、農家の方々が年に一度の収穫に丹精込めて作って下さったお米なのだから、粗末にしてはだめだ、と教えられ丁寧に食べた記憶が残る私には、到底納得が出来ない内容の記事でした。
 特集記事の性格から、新聞社サイドとしても、批判的な書き方は出来なかったものと思われますが、これは如何なものでしょう。勿論、我が国農家の苦境や農業の経済的活性化、そして休耕田という、場当たり的な悪政が生んだ“もったいない”存在等の問題は、早急に解決を迫られている喫緊の課題では有りましょう。
 しかし、これらの課題は、食生活の枠内を超えて解決しようとしてはならないと思うのです。
 あの大戦から見事に立ち直り、経済大国として立派に発展を遂げてきた我が国ではありますが、反面、食料の自給率については衰退の道を辿ったといっても過言ではなく、日常私達が口にするほとんどの食材が今や輸入に頼るしかなくなっているのは、周知の事実であります。この事実は、やや飛躍した例になりますが、我が国が他国からの武力攻撃に対し自衛の能力に欠け、米国の守りに頼るしかないという危うさとも通じるところがあるようにも感じられてしまうからです。食料の自給率を確保し、さらに世界の食料事情にも貢献する事に休耕田を活用する等の方向性を持って、農業の活性化を図る事が肝要であります。
 もし、この度のプロジェクト関係者の方々が「いや、目的はどうあれ、先ずは休耕田を活用する事が肝心で食料事情に問題が生ずれば、その時に方針を転換すればよい」と考えているとすれば、それは危険で安易な考え、と言わざるを得ません。なぜなら、先ず、このプロジェクトが実用化されるや、世界一の品質を誇って来た国産米は“悪貨は良貨を駆逐する”が如く低品質となって流通市場を席巻してしまうことになるでしょう。そして、農家の人々から品質向上に対するあくなき努力への情熱を失わせ、優れた品質の美味しいお米は姿を消してしまう事になりましょう。さらに、市場原理に基づく自由主義経済が成熟しつつある現在社会にあっては、このプロジェクト実用化と同時に、コメは必要な食の確保とは無関係な、価格に左右されるだけの流通を開始し、需給に著しい不均衡を惹起する事が、懸念されます。この事は現在すでに大豆やトウモロコシといった穀物流通市場において実際起こっている現象であり、懸念が現実のものとなる可能性を示唆していると言えるからであります。
 コメは、我が国食材のなかで数少ない自給可能な、しかも日本人にとってなくてはならない貴重な主食料品であります。これをガソリンに変えてしまう行為は、日本人の持つ倫理感、日本人としてのアイデンティティーにも逆らうものと思われるのです。
 空気は別にして、水より大切な資源(自然)を私には思い到るものがありません。同じように日本人にとって米より大切な食材を挙げる事は出来ないでしょう。
 米からバイオエタノールを取り出そうと企んでおられる研究者、組織、企業、学会の皆様に猛省を求めたく思います。
 どうか、お米をガソリンに変えてしまうのはやめてください。

by morinonusi | 2008-02-24 13:17 | Comments(0)  

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